よきにはからえ

おもしろきこともなき世をおもしろく、住みなすものは心なりけり

コロナ中の暇つぶし

コロナ隔離中は暇に忙殺されていたので、せめて有効に潰してやろうと思い、前々から読みたいと思ってた宇宙兄弟を全43巻分、メルカリで大人買いしてきた。

これまで、ずっとkindle派であったのだが、売れることを考えると紙も悪くない。特に中古本に関しては、すでに経年劣化が買取時の価値に反映されてるので、売る時の値段もさほど変わらない。実質の負担はメルカリ手数料と送料のみで、心ゆくままに好きな漫画を貪れる。正直、漫喫行くよりもコスパ良いだろう。今回、メルカリはじめて使ったが、今更ながら、この仕組みを作った創設者には敬意を払いたくなる。

そして本題に入ると、宇宙兄弟めちゃくちゃおもしろかった。スラムダンクドラゴンボールみたいに痺れる展開が待ち受けてる感じでなく、じわじわと累積していく感じのおもしろさである。漫画には珍しく、最初から最後まで中弛みせずに、読み進められた。

こんなにも面白いと感じた、その理由を分析してみたところ、ストーリー展開が現実の仕事に近いからだと思う。この物語は、ムッタ(主人公)が、その魅力的な人間性や機転の効いた振る舞いで、周りの人から認められながら、一歩ずつ夢に近づいていく話である。宇宙飛行士の仕事は夢とロマンに満ちている、一方でサラリーマンは現実という名の地面を這いつくばる存在、両者には文字通り天と地ほどの差がある。だが舞台は違えど、人間関係を円滑に進めながら、仕事を進めるという基本は同じではないだろうか。宇宙兄弟は、その華やかさの裏にある泥臭いプロセスの描写が絶妙であった。

特に登場人物の心情描写はとても凝っていたと思う。ひとりひとり丁寧に回想シーンとか入れたりして、彼らの個性やバックグラウンドがリアリテイをもって引き出されている。従って、これは主人公ムッタの物語ではあるものの、彼を取り巻く人々の想いと葛藤が交錯し合いながら同時並行で物語が進んでいく。とても共感を呼べるし、趣深い内容であった。

本でも漫画でも、良書だと思えるものは読んだ後に、自分の世界が少しだけ広がった感じがする。具体的には、何が変わったのか、言葉にできない。もしかしたら、ただ余韻に浸ってるだけで、気のせいかもしれない。だが少なくとも、宇宙兄弟を読んで、宇宙に大して身近に感じれるようになった。ロケットの仕組みや月に関する知識も多少は増えたし、JAXAの記事にも、自然とアンテナが立つようになった。こういう書籍との巡り合わせは、ラッキーだと思ってる。

ひとつ問題があるとすれば、読み終わって売る予定だったのに、キープしときたいという感情が芽生えてきたことだ。サーキュラーエコノミーの波に乗っかろうと思ってたが、人間の所有欲の存在を忘れていた。