よきにはからえ

おもしろきこともなき世をおもしろく、住みなすものは心なりけり

隔離生活中に考えてること

コロナ陽性判定を受けてから、隔離生活が3日目に突入した。僕の今の生活は一言でいえば、家庭内囚人である。英語で言えばJAIL at HOME。寝室と書斎とトイレを往復するだけの生活。ご飯の時間になれば、嫁が「おい、飯の時間だ」とでも言わんばかりの無精な顔つきでプラ容器に入れたご飯を配膳してくる。

子供達との絡みはほとんどない。彼らがきゃっきゃっと楽しそうに遊んでる声は鮮明に聞こえてくるものの、その空間に入ることは許されない。前回の日記では、家事が免除されてラッキーと書いたが、やはり一刻も早くこの境地から解放されたいと切に願う。

そして、うちの隔離政策は徹底している。「なるべく」や「できる限り」と言った曖昧な努力義務で終わらせない。あらゆる接触機会を合理的に徹底的に排除する。まるで鉄血政策で名高いビスマルクのようだ。「令和の女ビスマルク」それがうちの嫁だ。普段なら、穏健バランス派の僕は嫁のやり方に納得できず「それはやりすぎだ。もう少しハッピーな方法を考えよう」と言うだろう。そしてケンカになる。だが今回ばかりは、僕と嫁の利害は完全に一致して、手を取り合っているのだ。

それはなぜか?僕は激しく怒っているからだ。この1週間のあらゆる自由を僕から奪ったウィルスに。子供達と遊ぶことも許されない、外にも出歩けない。ちょうど今週末には、楽しみにしてた友人達との集い(飲み会)もあった。それも急遽キャンセルだ。絶対に許せない…

だが自我も感情もないウィルスに怒りをぶつけても虚しいだけである。そこで、僕は健全に怒りを発散させるためのシナリオを考えた。愚かにも僕の体内に入ってきたウィルス個体に人格があると仮定して、こいつをジョン(仮名)と呼ぶことにする。

ある日、ジョンは僕の体内に入ってきた。無論、目的は子孫繁栄のためである。ジョンは順調に分裂を繰り返す。どんどん繰り返す。僕の体内に無数のジョンの分身が複製される。だが異変を感じた僕の体は奴らを追い出すために熱を発生させる。ジョン一家は驚いて、うちから逃げ出す。そして、子供達に向かってこう叫ぶ「みんな散り散りに逃げるんだ!俺たちのうちの誰かが、新しい宿主に接触できたら、生き延びることができる!」

だけど、僕はそれを絶対に許さない。僕は行動範囲を可能な限り制限することで、ジョンの分身たちの付着範囲をコントロールする。そして、そこに宿主はこない。宿り主がいなければ、奴らは数日で死滅する。ジョン一族の系譜はそこで完全に途切れる。復讐完了である。

日常の怒りの大半は強い思い込みなので、それを沈めるのもまた強い思い込みであっていいと思う。