よきにはからえ

おもしろきこともなき世をおもしろく、住みなすものは心なりけり

向上心の罠

自分は向上心が高い人間だと思う。

つまり成長意欲が高く、成長のためなら困難なことにも気概を持って取り組める。就活の自己PRでも向上心を全面的に押し出してきた。

でも今になってこの向上心が悪い方向に作用しているのではないかと感じる。

 

期待値インフレーション

まず一点目は、向上心とともに、自分に対する期待値がインフレしてしまう点だ。つまり、仕事ではもちろんのこと、私生活や普段の会話でも、あるべき論で考えてしまい、こうしないと/できないとダメだと一義的に決めつけてしまう。

このあるべき論、合理的な判断が求められる仕事ではプラスに機能する。でも実生活の中では、正解がないことがほとんどで、「あるべき」と言い切れることはほぼない。ニュースの善と悪の判断は見方次第で紙一重で変わるし、夫婦関係においても、理想の形は人それぞれで唯一解は存在しない。このような白黒はっきりしない曖昧なものを、白だ黒だと決めつけてしまうことで、思考は硬直し視野は狭くなる。

そして、あるべき理想像だけが一人歩きした結果、現実と理想のギャップでもがき苦しむことになり、自己肯定感を引き下げてしまうことに繋がる。

 

生産性と遊び心のトレードオフ

そして二点目は、生産性の追求により、遊び心が失われる点だ。毎日のライフサイクルを効率化しようと、無駄な行動を極力なくすような考え方をしてしまう。なので、目の前のタスクとは無関連の情報は頭に入ってこない。目の前の景色や、人々の話声とか、日常を彩る要素は、ばっさばっさと捨象されるのだ。

無駄をそぎ落とされた日常は、同じ作業の繰り返しで、無機質なものである。当初は仕事の成長=人間的な成長と信じていたが、全然そんなことはなかった。日常生活の些細なできごとの積み重ねが、感受性を呼び覚まし、心を豊かにするものだ。そのことを、この年になって気づいた。

 

こんな感じで、本来、自分の成長のために存在してるはずの向上心が見事にその成長を妨げている構図が出来上がっている。何より自己肯定感を引き下げるのは、一番あってはならない。

 

もちろん仕事の場では、向上心はモチベーションを保つ原動力として、役に立っていると実感している。ただ過度に追及しすぎると、結果、人生全体のパフォーマンスを下げることに繋がるので、注意が必要だ。恋愛や就活と同じで、盲目的になると失敗する。

 

なにごともバランス感覚が大事だ。